極楽に生まれる? | カラスの独り言

極楽に生まれる?

 
 「お母さんは極楽に行ったの、地獄に行ったの?」
浄土や地獄に行くとか、来たとか、見たとか、生まれるとか、聞くとか、地獄を持って極楽に生まれるとか。もうどうしようもなく人間の五感に訴えるので果たして本当に実体的なものがあるのだろうと思ってしまう。

 人間が生まれる時は水生動物から陸生動物になる。それまで見るもの聞くものが母親に頼って間接的に得ていた世界が突如の断絶によって羊水から空気を吸い、その後は一人でその世界を選択して生きていくようなものだ。

 浄土に行くとか生まれるというのは、みな自分自身が今まで全く気付かなかった宗教心に気が付いた世界を言うのであって、ことさら実体的な別世界に魂が生まれたり、入ったりすることを意味しないのだろう。

 つまり、宗教心から見たこの世と自身の内的世界を現しているので、相対的な現実世界、目に見え触れること感じることが出来る実体的な世界を一端離れた、絶対的、永遠の世界というような無我無私の精神世界から見たものを表現しようとしたものなのであり、仏なる真実のはたらきに方向する仏の目や耳が凡夫に与えられ生の煩悩にそれらが付いた状態を現すものなのである。

 だから、この世の言葉で表そうとすれば、どうしても二重構造をもった言語表現にならざるを得ないのである。

 仏の智慧と慈悲を持ちながら、なお煩悩熾盛の凡夫を離れない人間として生きていく悲しくも有難い人間の限界を超えながらなお限界の中でそれを超えて限界に挑戦せよとの真実の叫びに呼応してゆく人間道の精神的な道程としての表現であり真理からの全ての命への願いでもあるのだ。
 
 ただ我々には一生の間、煩悩凡情もあるので、それに訴えられると弱い側面もあるから、母親の行った極楽世界に行くのだ、浄土に生まれるのだ、でも正しい意味を知っていれば首肯されるのでしょう。
なんまんだ

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